キタオの想い
今すぐできるSEアプローチ:インタビュー編(2)
2013.12.15
紳士ズボン縫製卸の会社のS.I.をふり返って・・・・・
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この事例には、面白い前提がある。 それは、中小企業でも汎用コンピュータが使い始められた時代で、中小企業の経営者や管理者もコンピュータの存在は耳にしているものの、知識の中に具体的なイメージが存在しない頃の出来事である。 そんな昔話が、昨今のI.T.浸透の時代に役立つ訳がないとお叱りを受けるかも知れない。 しかし、私自身、Pre-SE作業は、コンピュータの浸透やI.T.技術の発達とは聊か関係がないと感じる。 それは、仕事をしているのは人間であり、遠い昔から遣っていること、考えていること、困っていることに大きな違いはないと思えるからである。
言い訳はさて置き、そんな時代に巡り合った縫製会社の経営者は、面白い方で、第一声、 「最近、コンピュータちゅうもんがあるらしいでんな。 何や便利やて聞くさかい、うちも使うてみようかと思うてまんねん! どうでっしゃろ?」 この言葉に、SEだと思い込んでいた自分は面喰ってしまった。 「どうでっしゃろ?」と言われても返事のしようがない。 「自動車を買うのと訳が違います。」と言い掛けて言葉を呑んだ。
便利道具が世の中に浸透して行く入り口は、こんなことが切っ掛けなのかと驚いた。 話しの経緯から、コンピュータ処理を適用する対象業務を定めるところからの出発である。 まずは顧客の仕事の中味を知らなければ話しにならないということで、顧客の会社見学から事を始めた。 裁断のための型紙製作、布地を何枚も重ねての裁断、分業が進んだ縫製作業、仕上げ、検品と自分が履いているズボンが生産される過程を初めて目の当たりにした。
発した言葉は唯一つ、「へぇ~っ!凄いですね。」。 相手の会社の方は私が何に驚いているのか判らない。 「そうですか?」と返事が返ってきた。 その会社の人々は、それが日常で驚きでもなんでもない。 極自然な日常風景であり、毎日繰り返される作業なのだ。 聞く側と聞かれる側のギャップは大きい。 「倉庫も見ますか?」、「ええ、是非!」と倉庫へも案内して貰った。 扉が開くなり新しい布地の匂いが立ち込める。 薄暗い倉庫の棚には天井まで届くほど、出荷待ちのズボンがうず高く積み上げられている。 「気に入ったのがあれば、安うしときまっせ。」と好意的な言葉。 「気に入ったのが・・・」と言われても、百貨店の陳列とは話しが違う。 見ようと一本のズボンを抜こうものなら、積み上がっているズボンの山が崩れそうである。 「言うてくれはったら、出しますよ。」との介助で、5~6本のズボンから自分に合いそうなものを選んだ。 聞いた値段の代金、と言っても桁違いに安いが、支払いをして、その日の見学は終了した。
SE作業としての一日と云うより、ズボンを買いに行った一日となった。
㈱キタオ 北尾隆夫